警察学校を卒業して交番勤務になりたての頃、交番バイクで走行中に大転倒したことがありました。
最初にやらかした大失態でした
交番勤務中の移動はほぼバイク
最初の勤務日からガンガン乗ります
先輩の後をついて、物損事故や窃盗事件に行っていました
先輩は警察官10年やってる30代半ばの巡査長
バイクも何年も乗っていて、運転はうまいし速い
一方の私は、警察学校入校前に二輪の免許を取得したばかり
二輪の運転経験は、警察学校での数時間の練習だけ
先輩は優しくゆっくり走ってくれてはいけたけど、それでもついていくのが精一杯な時もあった
そして、3回目の勤務の日、その時はやってきた。起こるべくして起こった
昼頃だった
ひったくりの通報が入った
私にとってはこれまでの勤務で一番緊急性を要する事案だ
ひったくりは、あっという間に被疑者は遠くに行ってしまう
1分でも早く被害者のところに現着して、被疑者の手配や被害品の把握をする必要がある
先輩と一緒に急いで交番を飛び出した
先輩のバイクのスピードは今までと全然ちがっていた
不慣れな私に気を遣っている場合ではない
直線の速度もカーブの速度も今までと全然違っていた
私は離されないように必死についていったが、何度も怖いところがあった
そして、市街地の十字路に差し掛かった時だった
その交差点は片側1車線で、私たちが進行する反対車線側の交差点の向こうにはガソリンスタンドがあった
その交差点に差し掛かった時、ちょうど信号が青から黄色に変わるタイミングだった
先を走っていた先輩はその交差点を右折で入って行った
私も交差点に入れるかどうかは、タイミング的には本当にギリギリ
しかし、ここで止まってしまっては先輩も曲がった先で信号が変わるのを待つことになる。ひったくりに向かっている中で、信号一回分の時間は長すぎる。
迷いながら一瞬で判断した私は、ブレーキをギリギリまで送らせて一気に減速して右折しようとした。
しかし、一気に前後のブレーキをかけた瞬間、タイヤがロック
バイクは傾き一瞬で転倒。
右折しながらの転倒だったため、反対車線に飛び出しながら、数メートルにわたって私とバイクは別々に地面を転げ飛んでいった
幸いなことに対向車線の車はすでに黄色信号で止まっていたため、正面衝突にはなりませんでした。
もし、あの時対向車が黄色信号で急いで通過しようとしていたら、私は命を落としていたかもしれません。その点ではとても幸運でした。
しかし無様に転倒。
しかも制服警察官に交番バイク。
その一部始終を対向車線で止まっていた車の運転手、さらには交差点脇のガソリンスタンドの従業員が見ていました。
恥ずかしく仕方ない。
なんとかバイクを起こして早くその場から立ち去ろうとしました。
しかし、歩き始めたその瞬間、右足に激痛が・・。見てみると制服がボロボロに破れ、足からは出血していました。
ガソリンスタンドの従業員の方が駆け寄ってきました。
「大丈夫ですかおまわりさん?」
👮「いやあ大丈夫です」
と言いながら内心は「かなり痛い。しかし恥ずかしいから放っておいてくれ」。
フラフラしながらなんとかバイクを起こして交差点の右折先に行くと、バイクを止めて先輩が駆け寄ってきました。
私を見て一言「こりゃダメだな」。もう私たちふたりはひったく現場に向かえません。
しかし、こんな事態を無線では連絡できません。なぜなら無線通話と言うのは無線機を持っているすべての警察官が聞いているからです。
先輩が携帯電話で警察署の地域課に連絡します。
「現場に向かう途中新人が転倒しました。怪我もしています。もうしわけありませんが、他の交番かパトカーを現場に向かわせて下さい」。
それを横で聞いていてどんなに情けない気持ちになったか。
その後、私はすぐに署にもどり幹部に報告。ボロボロの制服をひきずりながら署に戻ってきた私を見た幹部の最初の一言。「二日連続かぁ。しかも今日は怪我有りか・・」
実はこの前日、私と同じく同期生の新人仲間もバイクで転倒事故を起こしていました。
新人が二日続けて転倒事故を起こしてしまったのです。
新人は警察官といえどもバイク運転技術の経験は浅く未熟です。
そこに「少しでも現場には急いで向かえ」という警察学校での教えが合わされば、事故が起きる確率は高くなるのは当然です。
私の事故から1か月、私たち新人は夜勤明けの後、署内でバイク運転の特訓をさせられました。徹夜明けのフラフラな状態での運転訓練はきつかったですね。
警察学校に入る人は、バイクの運転には少しでも慣れておいた方がいいです
ゆっくり安全運転に走ったらそれもそれで「遅い!現場到着が遅れる」と言われますから