元警察官ケイの警察ブログ

市民側からはわからない警察官の本当の姿を伝えるブログ

警察官になったら死体の仕事は必ずありますか?という質問への回答

今回は、警察官になりたい人からの質問や相談の中でも多い

警察官になったら死体の仕事は必ずあるんですか?」

「警察官になりたいけど死体の仕事が不安で迷ってます」

といった、死体の仕事について回答します

警察官の死体の仕事

1、警察官で、死体を一度も見たことがないという人は聞いたことがない

私が知っている限りでは、仕事で一度も死体と対面したことがない、という警察官はいません

探せば一人くらいはいるのかもしれませんが、それくらい警察官になったら、死体との対面は必ずあるということです。

だから結論を先に言うなら、

「警察官になったら死体は必ず見ますか?」

という質問に対しては、

「ほぼ間違いなく見ることになる」

という回答になります

 

ただし、この後詳しく書きますが

「死体と対面する(見る)」

「死体を取り扱う」

というのは、まったく別物です

 

警察官によっては、

死体を見る、

ということは何度かあっても

死体を取り扱う

ということはほとんどしたことがないという人もいます

詳しくはこの記事の後半で。

 

2、なぜ警察官は死体の仕事があるのか

そもそも、なぜ警察官の仕事には死体が避けられないのでしょう

日本で誰かが死んだら、必ず警察の仕事の対象になるわけではありません

では、警察が仕事で扱う対象になるのはどんな死体か。

 

まず、ざっくり言うと

事件事故の死体

事件事故の可能性が否定できない死体

のどちらかです。

このどちらかに該当する死体は警察の仕事の対象となります

このどちらにも該当しない死体は、警察の捜査や調査の対象にはなりません

 

事件事故の死体とは言い方を変えると、犯罪行為によって死亡した死体

ということです

この犯罪行為というのが、二つあって

事件

事故

です。

 

以下、それぞれ具体的なケースをあげていきます

(1)事故死

代表的なものは交通事故ですが、事故死には他にも、

工場で誰かのミスで爆発が起きてそれで亡くなった

とか、

バカな親がパチンコ中に子どもを車内に放置して熱中症で亡くなった

などのケースも含まれます

 

人に危害を加えようという意思はなかったけど、安全義務や注意を怠ったこと(過失)で、人が死亡した場合です

このような事故で亡くなった人の死体は警察が調べる対象となります。

わざと(故意)でなくても過失で人を死亡させた場合は、過失致死(ミスで人を死に至らしめた)という犯罪になるので警察の捜査の対象になります

当然、死体を調べて死因を明らかにする必要が出てきます

これが事故死です

交通事故の場合は交通課が担当となり、それ以外の事故死は刑事課の仕事になります

 

(2)事件死

殺人事件や傷害致死などの被害者の死体です

事故死とのちがいは、人を死傷させようという意思(故意)をもって死亡させている点です

このような犯罪で殺害された死体は、当然警察が徹底的に調べる必要があります

これが事件死の死体で、刑事課の担当となります

本当に少数ですが、警備課が担当になる死体も時々あります。

 

(3)変死体

変死体というのは、調べてみないと何が原因で死亡しているか不明な死体のことです

例えば、

一人暮らしの人が部屋で死んでいるのが発見された

という場合、

事故死なのか

事件死なのか、

自殺なのか

病死なのか

調べてみないとわかりません

 

このように、調べてみないと事件事故の可能性が否定できない死体も警察の対象となります

調べた結果、自殺や病死であると判明すれば、その時点で警察の手は離れます

しかし、それをはっきりさせる調査・捜査は警察がやらなくてはいけません

調べた結果、殺されていたということが明らかになれば、そこからは事件死になります。

担当するのは刑事課となります

一見した状況からして99%自殺や病死っぽくても、自殺に見せかけて殺害されることもあるので、かなり慎重に調べます。

本当は事件死なのに、警察のミスで見過ごしてしまったら大変なことですから

 

これが変死体です

これから激増するであろう、高齢者の孤独死などもすべてこれに含まれます

 

変死体に含まれない死体とは例えば、

病気で入院している人が、医師の確認のもと、その病気が原因で亡くなった

といった場合です、

この場合、事件事故の可能性はないわけですから、警察が関わる必要はまったくありません

 

これが警察の対象となる死体の主なケースです

 

ここまで読んでくれたなら、気がついたと思います

警察官の中には、死体を取り扱う部課(部署)と、死体とほぼ関わらない部課があると

今までのところで、死体の仕事の担当として出てきた部下は

・刑事課

・交通課

でした。

 

では、これ以外の部課に入れば死体を見ることはほとんどないのでは?と思いますよね

しかし、刑事課・交通課に勤務したことがない警察官たちも、ほとんどの人が死体と対面した経験があります

それはなぜか

 

(4)死体を見る(対面する)のと、死体を取り扱うのは全然ちがう

「死体を見たことがない警察官」はいないとしても、「死体を取り扱ったことはほとんどない」という警察官も実はけっこういるのです。

警察官といっても、部課(業務セクション)によって死体との関りの程度は大きくちがいます

 

警察署の場合、主に以下のような業務に分かれています

地域課 交番やパトカー

交通課 交通事故や違反取締、免許事務など

生活安全課  捜索願、少年事件や特別法犯の捜査、銃所持や風俗営業の許認可、防犯活動など

刑事課  窃盗、強行(殺人、強盗、傷害など)、暴力団、詐欺、などの犯罪捜査

留置管理課  逮捕された被疑者の身柄管理。留置場ですね

警務課  事務。署の行事管理や、職員の福利厚生、装備品や制服の管理など

警備課  外国人組織、テロリスト集団の情報収集など

 

これら↑の中には、

死体見ることはほとんどないところもあれば、

見るだけならけっこうあるというところと、

毎勤務のように死体を触る

というところがあり、死体との関り程度はまったくちがいます

 

私は刑事課員の時は、壮絶な死体をたくさん取り扱う業務をしてきました

列車飛び込み、ウジ虫だらけで腐乱液が滴る腐乱死体、焼死体、水死体

最初は本当にきつかった。

毎日死体の通報が入らないか怯えていました。

精神的なショックやストレスは相当なものでした

警察官の仕事の中でも、死体の取り扱い業務は疲労や負担は段違いで重いものでした。

 

担当業務によって、死体との関りの程度は以下の三つに分けられます

①見る機会はあるけど、触ることはなく見るだけで済む課はふたつ

死体を触って徹底的に調べる作業が避けられない課はふたつ。

③ほぼ見ることはない課

では、具体的に上げていきます

①見ることはあるけど、触ることはなく見るだけで済む課

それは
地域課
生活安全課
です。
 
このふたつの課は、ほぼ「死体を見る」だけです

 

地域課の交番・パトカーの警察官は、死体を見る機会はあっても、触ることまではほとんどありません

なぜなら、現場に着いて死体を確認したら、その後の調査や捜査をやるのは地域課の仕事ではないからです。

後述しますが刑事課や交通課に連絡をして、あとは現場に人が立ち入らないように見張るくらいです

時々運が悪いと、死体の搬送を手伝わされることがあるくらいです

 

生活安全課も同様です。

一人暮らしの知人や親せきと連絡が取れない、という通報が入ると、その安否確認は生活安全課の仕事です

しかし、現場に行って死んでいることが確認されると、そこから先は刑事課の仕事です。刑事課に引き継いで生活安全課の警察官は引上げです

だから、このふたつの課は、見る機会はあるけれども、見るだけです

死体を触ったり調べたりはほとんどすることはありません。

②死体を触って徹底的に調べる作業が避けられない課はふたつ。

それは

刑事課

交通課です

なにしろ事件死と事故死の担当課です。

 

しかし、この二つの課が取り扱う死体の件数はまったくちがいます

死体を取り扱う件数がダントツに多いのは刑事課です

交通課は年間に数回程度です

交通課が死体捜査をするのは、交通事故で死者が出た時だけです。

交通事故で死者が出ると、解剖業務までやります。

一方、それ以外の死体はほぼ刑事課です

他殺、自殺、孤独死、・・・。

交通事故による死亡以外はほぼ刑事課です。

私も警察署の刑事課勤務はやりましたが、ほぼ毎勤務死体の取り扱いでした

「おれたちって刑事課じゃなくて変死課だよな」と言っていた人もいたくらいでした。

警察が取り扱う死体の95%は刑事課員でしょう。

他殺体、自殺、列車飛び込み、ウジ虫で真っ白に見えた腐乱死体、焼死体

ありとあらゆる死体を取り扱いました

今思い出してもきつかったですね。

 

③それ以外の課はほぼ見ることはない

留置管理課、警務課、警備課。

これらは死体を見ることはほぼないですね

警備課はごくたまーにあるかもしれませんが、数年に一回くらいでしょう

業務内容を見れば当然です。

 

警察官になったら死体の仕事は避けられないの?に対するまとめ

以上のように、警察官と一口に言っても、担当業務によって死体との距離は大きくちがいます

警察官になってどうしてもやりたいことがある、

でも死体だけは・・・

という方は、これを参考にキャリア選択をしていけば、あまり死体と関わらない警察官人生を歩むことも可能だということです

刑事課員たちのリアルな死体現場の話はこちらのnoteに↓にまとめてありますが、本当にリアルに書いてあるため気持ちが悪くなっても自己責任でお願いします↓

 

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