元警察官@motokeisatuです
交番に届けられる落し物の中には、時には予想外の物があります
私が交番勤務員の時、現金10万円が入った財布の落し物を届けに来た女性の話です
年齢は40代の女性で、割と小奇麗な感じで声が大きくハキハキした感じの女性でした
駅の近くで財布を拾ったということで届けにきました
男性用の黒色の財布で、中を確かめるとなんと現金が10万円入っていました。
財布は現金が入っている可能性が高いので、警察官と拾得者が一緒に中身を確かめます。
なぜ警察官だけでなく必ず拾得者と一緒に確認するのか。
実際には10万円入っていたのに預かった警察官が1万円抜き取って自分の物にした、と言われないようにするためです。
また、逆もあります
10万円しか入ってなかったのに、持ち主が見つかって返却したら「おれが落とした時には11万円入っていたはずだ。警察官が1万円盗ったんじゃないのか」と言われた時。
拾ってくれた方と一緒に確認していれば、「確かに10万円しか入ってなかったことを確認しています。」
と言えるようにするためでもあるのです。
拾得の取り扱いはたかが落し物で犯罪事件と比べると軽い扱いに思われがちですが、拾得関係の不祥事って実は結構たくさん発生してます。
その女性はすかさずこう言いました。
「これって持ち主が見つからなかったら私の物になるんですよね?」
「持ち主が見つかった場合、私はどれくらいもらえるんですか?」
と見事なまでに本性丸出し。
しかし・・・・・
この後事態は一変します。
この女性は頭を抱えて悩むことになります。
現金の他にも、財布の中に何が入っているか全て確認します
そして財布の中身を確認していったところ、
暴力団関係者の名刺が何枚も出てきたのです
財布の持ち主は明らかに暴力団関係者であることがわかりました
持ち主はほぼ間違いなく見つかり財布は持主に戻るでしょう
先ほどまで「持ち主が見つかったら、私はお礼としていくらくらいもらえますか?♬🎵」
と言っていた拾得者の女性
この方は、お礼をもらうには財布の持ち主である暴力団関係者と直接連絡を取らなければいけなくなります
そのことを伝えました
そうしたところ、「えーどうしよう」と悩んでしまい、さっきまで急上昇していたテンションが急降下
「暴力団関係者と連絡取るなんて絶対に嫌!」
と言うので、私の方から「確かにそう思うのは当然です。お礼の連絡については断ることも可能ですので」 と言ったのです。
私としては、一般の方が暴力団関係者とわかっている人と連絡を取るなんて嫌だと思うのは当然だと思いました
そのため、女性がてっきり「今回はお礼をもらうのは諦めます」と言うと思ったのです。
しかし、その女性は
「でも数万円を捨てるのは惜しいですねー」
と予想外の答え。
彼女はまだ諦めてなかった
驚いた私は「お礼の連絡をもらって、いくらもらうとかは基本的に当事者同士でやってもらわなければいけないのですが、よろしいですか」と改めてもう一度説明すると
女性は「暴力団関係者と連絡取るなんて嫌だし、お礼をもらう時に会うなんて絶対イヤ」
と言うので、私は「では今回はお礼をいただくのは放棄するということでよろしいですか?」
と聞いたら
女性は「でもお金は欲しい!。なんとか方法はないんですか?」
と、諦める気はない様子。
私はだんだん面倒くさくなってきました。
いくら仕事でもそこまで相手の気持ちに寄り添えるほど人間できてませんよ。
確かに数万円は大きいけど暴力団と会ってまでもらう金額じゃないだろ。
いい加減諦めたらいいのに、
面倒くさくなってきたので、警察署の中で拾得手続きの担当部署である「会計課」に問い合わせました。
「相手と連絡を取るのは嫌だけど、お礼の金は諦められないって言ってる。なんか納得してもらうような方法はあるの?」
と聞いたところ、
やはり基本的には無理だけど、それじゃ納得して帰らないでしょうから、今日の所は、とりあえず持ち主が見つかっても女性の連絡先は相手には教えない。
でも、お礼の連絡は希望してるから、特例として会計課が間に入ることを検討します
との回答でした。
私は女性には「持ち主が見つかったらあなたに連絡します。でもあなたの承諾無しに相手に連絡先は教えません。その時にもう一度方法を検討しましょう」
ということで納得してもらいました。
その後持ち主が見つかってどうなったかまでは私の方では知りません。
落し物で届いた物は、次の日の夜勤明けですべて会計課に引き継いで、その後の手続きも全て会計課がやります。
10万円が出てきた時には、
ラッキー
と喜んでいた女性ですが、まさか暴力団関係者の財布だったとは思わないですね。
しかし簡単には諦めないタフな女性でありました。
あなたならいくらで暴力団員に連絡先を教えてもいいと思いますか?