私と警部補は警察署に戻った。
私たちが課内に戻った時、玲子さんはいなかった。
私も警部補も自分のデスクに座り、いつもと同じように仕事を始めた。
しばらくして玲子さんが課内に戻ってきた。
「戻りました」と言いながら入ってきた彼女。
「戻りました」の声から3秒後、警部補は突然、課内全員に聞こえるような声で、とんでもないことを言った
「おい、玲子、こいつ(私のことを指さし)お前の笑顔が見れてよほど嬉しかったらしいぞ。惚れちまったってよ。お前彼氏いないよな?こいつどうだ?ダメか?」
課内全員が聞いていた。
ここまでいくと飛躍じゃなくて捻じ曲げだ、
しかも言うなら、せめて彼女にだけ聞こえるように言ってよ。
気まずいったらありゃしない
でもこの警部補の言うことは、課内みんなが「また言ってるよ」程度のこと。
ただし、私と彼女を除いて。
いや、彼女がどう思ったかはわからない。
私は彼女の反応が気になった。
私は、まるで警部補の声が聞こえなかったかのように視線はパソコンを見たままで、視界の隅で彼女を捕えた。
彼女は警部補に何も言うことなく、そのまま席に着いた。
彼女のデスクと、私のデスクの間は約7~8メートルくらい。
やっぱり反応しないよな。
と思って視界の中の彼女から仕事に意識を戻そうとした瞬間、
彼女は一瞬チラっと私の方を見た。
本当にチラっと。顔は机上の上のパソコンに向かったまま、視線だけを上げてチラっと。
そして、いつも通り無表情で仕事に取り掛かった。
今のチラっと見たのはなんだろう。
もしかして、私が彼女の反応が気になったように、彼女も私の反応を気にしたのだろうか。
しかし、この警部補の発言以降、私と彼女の間に何か変化が起こることはなかった。
この警部補の言葉を聞いた時に彼女がどう思っていたか。
それを知ることができたのは、職場異動でお互い別々の職場になることが決まった送別会のお開きの時だった
その前に、彼女との距離が一気に縮まる大きなチャンスがやってきた。
管内で大きな警備が必要になる仕事で、私と彼女がペアになったのだ。